月夜の翡翠と貴方【番外集】
…もしかして。
ルトが、セルシアやロディーの前で私に触れてくるのは、ふたりを慣れさせるため、なのかもしれない。
彼を見て、そう思った。
「さて、セルシア様。今日のお昼前に、ロディー様がいらっしゃいますからね。しっかりなさって下さい」
僅かに頬を赤くしながら、ノワードはコホン、と咳払いをしてそう言った。
途端に、セルシアの表情が固まる。
「そっ、そっ、そう、ですわね…」
…先程の私とルトのやりとりのせいか、セルシアの顔は益々赤くなった。
大丈夫なのだろうか、と心配になったとき。
突然に、部屋の扉がバン、と開いた。
皆で一斉に、振り返る。
そこにいたのは、息を切らしてセルシアを見つめる…ロディー、だった。