月夜の翡翠と貴方【番外集】
それからドレスを着て、セルシアに髪を結ってもらって。
日が、暮れる。
……ディアフィーネで迎える二度目の夜会が、始まろうとしていた。
*
わぁっ、と、会場内で上がった歓声が聞こえた。
もう、ダンスの時間だ。
主役のセルシアとロディーが、踊り始めたのだろう。
オリザーヌの邸の広い庭で、私とルトはふたり、夜空を眺めていた。
セルシアとロディーが踊っている姿を見ようと、会場の扉を開けて中を覗く。
……ふたりの表情は、前よりずっと柔らかかった。
幸せそうなセルシアの表情に、私も嬉しくなる。
思いの通じ合ったふたりの姿に、周りも見惚れているようだ。
「……綺麗」
愛する人から贈られたドレスを舞わせて、彼女は軽やかに踊る。
その姿は、誰が見ても美しくて。
桃色の、華。
彼女は私を『憧れている』と言うけれど。
…それでも、私は彼女を羨ましいと思う。
どうしても、だ。