月夜の翡翠と貴方【番外集】


それからドレスを着て、セルシアに髪を結ってもらって。

日が、暮れる。

……ディアフィーネで迎える二度目の夜会が、始まろうとしていた。





わぁっ、と、会場内で上がった歓声が聞こえた。

もう、ダンスの時間だ。

主役のセルシアとロディーが、踊り始めたのだろう。

オリザーヌの邸の広い庭で、私とルトはふたり、夜空を眺めていた。

セルシアとロディーが踊っている姿を見ようと、会場の扉を開けて中を覗く。

……ふたりの表情は、前よりずっと柔らかかった。

幸せそうなセルシアの表情に、私も嬉しくなる。

思いの通じ合ったふたりの姿に、周りも見惚れているようだ。


「……綺麗」


愛する人から贈られたドレスを舞わせて、彼女は軽やかに踊る。

その姿は、誰が見ても美しくて。

桃色の、華。

彼女は私を『憧れている』と言うけれど。

…それでも、私は彼女を羨ましいと思う。

どうしても、だ。


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