月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…嬉しい、よ。でも……」
可愛いらしい黄色のドレスを、眺める。
……これを着るには、今の私は…ふさわしくないのでは、ないかと。
幼い頃、私の髪を見て、母親はいつも『綺麗』だと呟いていた。
じわ、と目の奥が熱くなる。
…綺麗、ですか。
私は今も、綺麗でいられていますか。
目元を拭う私から顔をそらして、ルトは夜空を見上げる。
そして、「……なぁ、ジェイド」と言った。
「…お前と一緒にいたら、俺も変われるかもしれない」
…え?
驚いて、顔を上げる。
見上げたまま、ルトは穏やかな表情で言った。
「…お前に、人殺しはさせたくないと思ってた。けど、俺は今まで何も気にせずに依頼を選んでたからさ。これからどうしようか、迷ってたんだ」
……あ。
人に躊躇なく刃を向ける彼の姿を思い出して、ぞくりとした。
…彼は、依頼が殺人であっても、気にしない男だ。
だから私もそれなりに、覚悟はしていたのに。
「今回、報酬を求めずに、強盗退治なんてしたけどさ」
ふ、と笑う。
その目が、ゆっくりと閉じた。