月夜の翡翠と貴方【番外集】
「今までの人助けだってそうだけど。…たぶんお前がいなかったら、俺は見返りなしにこんなこと、してなかったよ」
…思い出す。
スジュナやラサバ、セルシアとこのディアフィーネの村のために、私達が考え、動いてきたこと。
けれど彼にとって、『依頼』には必ず『報酬』がついてくるもので。
……そうだ。
思えば、私がいつも勝手に動いてしまっていたから。
スジュナに初めて会ったとき、『家へ連れていってあげる』と言ったのも、私。
セルシアが怪しい男達に襲われているのを、ルトに助けるよう言ったのも、私だ。
けれどルトは、何も言わなかった。
私の気持ちを汲み取って、当然のように旅を中断してくれていたのだ。
「……ルト」
「迷う必要なんか、ないのかもな。…こうやってお前と、善意だけの人助けして…みんな、『ありがとう』って、言ってくれる」
彼は目を閉じたまま、ふわりと笑う。
私はそれを、唇を噛んで見つめていた。