月夜の翡翠と貴方【番外集】
「それを俺は…『嬉しい』って、思ったよ」
月が雲から抜け出して、彼を照らす。
茶髪が、綺麗に透ける。
ルトは私のほうを向いて、照れたようにはにかんだ。
「これからは、誰かのための依頼を、受けようか」
『ありがとう』と、言ってもらうために。
誰かの笑顔を、取り戻すために。
私達は、戦うのだ。
「……うん」
あふれる涙を、ルトの指が掬う。
彼の何かを、私は変えられたのだろうか。
私の存在が、彼に何かをもたらすことが、できたのだろうか。
ルトは立ち上がると、私の手を引っ張って、立ち上がらせた。
そして、明るく笑って。
「ジェイドは自分を、誇っていいよ。お前のおかげで、救われた人がいるんだから」
…自信なんか、いつまで経っても持てないけれど。
それでも、信じていいだろうか。
私を信じてくれるひとがいることを、信じていいだろうか。