月夜の翡翠と貴方【番外集】
「あ……」
カタカタ、と音がしそうなほど、身体が震える。
四日前に見た、あの人。
恐ろしい笑みを浮かべて、両親を見下ろしていた、あの人。
ナタナ・フレドラはわたしを冷たい瞳で見つめたあと、部屋へ入ってきた。
…やだ。やだ…!
彼の後ろから、先程の召使いの女の姿が見えた。
どうやら、彼女が呼んだらしい。
思わず睨むと、女は気まずそうに目をそらした。
「マリア」
寝台に座るわたしの目の前に、ナタナが立つ。
身体が、氷のように動かない。
彼の、暗い暗い瞳から、目がそらせない。
「…マリア。何も食べていないというのは、本当か?」
「……あ」
「答えるんだ」
穏やかな、表情だった。
なのに、その目が。
美しいその目が、わたしを責めている。
わたしは恐る恐る、頷いた。
ナタナは、ひとつため息をつく。
「…ちゃんと食べなさい」
そう言って、わたしの頭を撫でる。
思わず目を見開くと、彼は優しく微笑んだ。