月夜の翡翠と貴方【番外集】
レンウはもう一歩こちらへ歩み寄ると、「…じゃあ」と口を開いた。
「…どうやって、ルトを丸め込んだんだい。君に、外見以外の魅力は?」
…丸め込んだ、なんて。
そう言い返そうとして、今の私にはなにも言えないことを悟る。
「君は、なにかルトのために出来るの?仕事の手伝いは?」
じくじくと、胸の底を焼かれる。
なにも言えない。
…なにも、言えない。
レンウは黙っている私に、静かに呟いた。
考えたくなくて、目を背けていた、問いを。
「…君は、何故ルトに愛されているの?」
どく、と。
痛いくらい強く、音がした。
もう、なんの音かもわからない。
そしてそれは、激しく鳴り始める。