月夜の翡翠と貴方【番外集】
「準備をしてくる。街へ出よう」
…街へ。
その言葉に、久々に胸が高鳴った。
いつも窓から眺めることしかできない、ターヅの街へ。
行けるんだ…!
慌てて本を、棚へ戻す。
すると、あの召使いの女が部屋へ入ってきた。
いつもと違うわたしの表情に気づいたのか、彼女はクスリと笑う。
「お着替え、お手伝いしますわ」
そうして、わたしは滅多に着ることのない洋服を身につけた。
ひとり部屋で待っていると、正装姿のナタナが部屋へ入ってくる。
わたしの姿を見て、「麗しいね」と目を細める。
「碧の髪に、よく映えている」
深い青色。
彼の優しい視線から逃れるように、わたしは目をそらした。
すると、彼が一歩こちらへ近づいてくる。
それを黙って見ていると、彼は懐から鎖のついた細い首輪を取り出した。