月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…そ、れは…」
声の震えに、気づいたと同時に。
「!!」
突然胸ぐらを掴まれ、無理やりに立たされた。
「………っ」
「僕はねえ」
目に映ったレンウの表情は、明らかに怒りを表していて。
…笑って、いない。
「君のような中途半端な人間が、大嫌いなんだよ」
レンウの目の奥に、侮蔑と嫌悪が見える。
…ああ、駄目だ。
「ルトの隣は譲らないと言った目は、確かに強かったのに。思いの底に、一瞬でも迷いはつくっちゃいけない」
鋭い視線から、目を逸らすことができない。
…駄目、だったのに。
見抜かれては、いけなかったのに。