月夜の翡翠と貴方【番外集】
痛みのなかで感じた、あの温もりも。
優しさと共に刻まれた、彼の冷たさも。
……ぜんぶ、ぜんぶ、『愛情』だったとしたら。
じわ、と涙がにじんで、視界が揺れた。
…あなたの優しさで、生きていたの。
あなたへの憎しみで、生きていたの。
痛みと狂おしさで歪んだ、あの日々を。
『愛しい』と感じ始めたのは、一体いつからだっただろう。
「……っ、う、あぁ…」
ボタボタと涙をこぼし始めた私を、ルトは戸惑いながら抱きしめてくれた。
……愛して、いました、心から。
あなたもそうであったと、そう願っても良いですか。
………『マリア』
彼の声が、耳に強く響く。
…わたしのすべてを、奪った人。
『マリア』がいちばん、愛したひと。