月夜の翡翠と貴方【番外集】
5 月夜の翡翠と貴方
ペルダイン、碧の相棒、彼の敵
『出会いは、偶然だった』
そう、いつも彼女は語っていた。
*
もしも私の髪が、碧色でなかったら。
もしも私の容姿が、『美しい』と呼ばれるもので、なかったら。
彼に、出会えてはいなかった。
心の底から憎んで、壊してやろうと何度も思った容姿が。
まさか心の底から愛するものと、引き合わせるなんて。
心を殺して生きていた、あの頃の私には想像もできなかっただろう。
こんなにも強く、誰かと共に生きたいと思う、今の私がいること。
*
「それでは、よろしくお願い致します」
愛想良く微笑んだグランデ夫人は、そう言ってこちらへ頭を下げる。
私とルトはグランデ夫妻の家の前で、「かしこまりました」と笑い返した。
時刻は、昼過ぎ。
ケボウという賑やかな街に立ち並ぶ民家の通りを、私達はふたりの子供と共に歩いていた。
目指すは、ここから歩いて数日の距離にある、コーロという街。
このふたりの子供を、そこにあるプリジア貴族家へ送り届ける、という依頼を先日、依頼所で受けたからだ。