月夜の翡翠と貴方【番外集】
「裏の世界において、迷いや情けは厳禁だ。一瞬でも隙を見せたら、つけこまれるんだ。意志に迷いなんかあって、君はどうしてルトの隣にいられる」
責め立てるように。
ずっと、心の奥底で溜まっていた不安を、目の前の口によって暴かれていく。
「君のような人間が、来ていい世界じゃない。役立たずで甘ったるい女なんて、最もいらないものなんだよ」
知っている。
もう、充分に知っている。
何故愛されているのか。
そんなこと、私が訊きたい。
愚かな奴隷を、どうして隣におこうなんて。
レンウは、ハ、と鼻で笑うと、美しい唇を嘲るように歪めた。
そして、言ったのだ。
爆弾のような、その言葉を。
「…ルトも、落ちたものだね」
…震える手が、止まる。
レンウが放ったその言葉に、私は目を見開いて彼を見つめ返した。