月夜の翡翠と貴方【番外集】
「どこの街も、賑やかね!人がたくさんいるわ」
店の外壁に寄りかかり、ネオは人々がぞろぞろと歩く通りを眺める。
人々はフードをとっている私を、物珍しそうに見た。
私は「そうだね」と返して、こちらへ向かってくる視線を見つめ返す。
ケボウやパラべなど、この付近の街は比較的賑わっているようだ。
けれど、それはこの国では当たり前のことではない。
私はディアフィーネを思い出し、「でもね」と言った。
「…どこの街も、こんなに人がいるわけじゃないの。人がいるってことは、栄えてるってことでしょう。それはすごく、尊いものなの」
平民の人々が、笑っている。
それは決して当たり前のことではないのだと、ルトと旅をするにつれて知っていった。
ペルダイン王国。
この国に住むナタナの奴隷となってからずっと、私はこの王国にいる。
身分制度が厳しく、いつだって貴族が笑っている国。
豊かな自然は、少数の王族や貴族、僧侶や神官によって独占されていた。
「……そうね。知ってるわ、わたし。ここは、決していい国なんかじゃないこと」
驚いて、隣へ視線を向ける。
先程までの明るい顔とは全く違う、冷めたような、諦めた表情がそこにはあった。