月夜の翡翠と貴方【番外集】


「恋仲の、相棒。……つまり、ルト・サナウェルの最愛の人…それが、貴女だ」


その瞬間、男の懐でキラリと何かが光った。

……短剣………!

ああでも、気づくのが遅い。

その刃がゆっくりと、こちらへ近づいてくる。

私は咄嗟にネオをしゃがませようと、その肩にぐっと力を込めた。

まずい……!


「…ジェイド?」


近くから聞こえたその声に、男がハッと目を見開いた。

そして、サッと短剣をしまう。

…え?

買った食材の入った紙袋を手に、ルトは眉を寄せて私達を見ていた。

初対面の人にも好意的な彼にしては珍しく、警戒するような目をしている。

……ルトが来たことで、短剣をしまった……?


「…ジェイド。誰?その男」


ルトの出した低い声に、男がほんの少し怯んだように見えたのは、気のせいだろうか。

私にしか聞こえないくらいに小さく舌打ちをしたあと、男は取り繕うように微笑んだ。

「……すみません。あまりにお美しい女性でしたので、思わず。お相手がいたとは知りませんでした」

……何を言ってるんだ、この男は。

同業の人間だと言おうと、私は口を開いた。


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