月夜の翡翠と貴方【番外集】
ルトは何も言わずに、立ち止まった。
睨むくらいに強く、私は彼を見つめて。
「…だから私も、戦うの。守られるだけで、いたくない。私だってルトを、ネオをタツビくんを、守る義務があるの」
どうしてひとりで、背負いこむの。
ルトの敵は、私の敵でもあるのに。
私はもう、ルトに守られる側じゃない。
ルトと一緒に、この子達を守る側だ。
私が少しだけ怒っているのに気づいたのか、ルトはやがて小さく笑った。
そして私を見て、眉を下げて「そうだな」と言う。
「…相棒、だもんな」
……ねえ、ルト。
ルトが私のことを、心から愛してくれていること、私はもう充分に知っている。
それを卑下しようなんて、否定しようなんて、もう、思わない。
……それ、でも。
守られているだけなのは、嫌なのだ。
ルトのためなら、いくらでも戦う。
死んだって、構わない。
様々な偶然が重なり合って、貴方と巡り合えたこと。
この感謝を、この恩を私はまだ返せていないのだ。
『無理はするな』と、いつも貴方は私に言うけれど。
それは、私の台詞だ。
私を守るために貴方が血を流す姿なんて、……もう、見たくない。