月夜の翡翠と貴方【番外集】
私を救ってくれた、その笑顔を愛しているから。
ルトのために死ねるのなら、本望とさえ思うほどに。
私は心の底から、彼の笑顔が永遠であることを願っていた。
*
「…あんたら、ちょいといいか?」
小さな街の、夜。
暗く、人気の無い路地の壁に寄りかかり、正装姿の男が煙草を吸っていた。
苛立ちを発散するように、黒い革靴をコツコツと地面に打ち付ける。
その横にある木箱の上には、上等なシルクハットが置かれている。
周りには同じような格好をした男が数人、彼を囲うようにして立っていた。
そこへ、貧相な身なりをした男達が、声をかけた。
「……なんだ?」
煙草を吸っている男ではなく、そのすぐ横に立った男が返事をする。
まるで山賊のような外見をしている男達を、汚いものを見るような目で見ている。
声をかけた男達は、その視線を気にすることなく、ニヤッと笑った。
「お前さんら、ルト・サナウェルって男を狙ってるんだろう」
手前にいた小太りの男が言った言葉に、煙草を吸っていた男がちらりと視線を動かした。
「……それが、なんだ?」
話に食いついてきた、と言わんばかりに小太りの男はニヤリと笑うと、「俺らはなぁ」と切り出した。