月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…ジェイドさんもあんな風に着飾ったら、きっとすごく似合うわね」
何気なく言ったネオの言葉に、驚いた。
…私が、踊り子?
「…に、似合わないよ」
「絶対似合うわ!絶対!ね、そう思うでしょう?ルトさん!」
ルトの背中をトンと押して、ネオが声をかけた。
タツビの相手をしていたからか、ルトは「えっ、なに?」と聞き返した。
「ああいう衣装を着たら、ジェイドさん、きっと似合うわよね!」
近くで人々に囲まれ踊っている、女性を指差す。
ルトはその女性を見て、そして私を見てから、面白そうに笑った。
「…そうだなぁ。似合う、かもなぁ?」
……その、含み笑いが嫌だ。
似合うと断言して欲しかったわけではないが、明らかに馬鹿にされるといい気はしない。
ツンと唇を尖らせた私を見て、ルトは「まぁ、でも」と言った。
「…いずれにしろ、人前であんなに肌の見える格好、俺がさせないけど」
ちら、と向けられた色のある瞳に、顔が熱くなった。
…彼の言葉は、『命令』でなくても私を拘束する。
その有無を言わさない目に、私は抗えないのだ。