月夜の翡翠と貴方【番外集】
「……言われなくても、着ないから。大丈夫だよ」
「ハハ。お前ならそうだろうな」
そう言うと、ルトは前を向いた。
恥ずかしくて唇を噛んでいると、ネオがクスクスと笑っていた。
「…どうして、笑ってるの」
「ふふ。ジェイドさん、可愛い」
…こんなに小さな少女に、からかわれるなんて。
悔しいなぁと思いながら、前を向く。
いつの間にかタツビが大きなチキンを持って、今にもかぶりつこうとしていた。
すかさず、ネオが「あーっ」と声を上げる。
「タツビ、ずるい!わたしだって食べたいわ!」
「そんなの、待ってられるかよ。オレはもう、腹ペコなんだっ」
言うが早いか、肉にガブリとかぶりついたタツビに、ネオが悔しげな顔をする。
その様子にルトが笑って、「買いに行こうか」とネオを連れていった。
それから一時間ほど、食べたり踊りを見たりして過ごした。
タツビはその間ずっとと言っていいほど何かを食べていて、ネオが終始呆れていた。
祭りでは様々な市場が出ていて、色々なものが売られている。
そろそろ胃袋が満たされたのか、タツビが食べるのをやめた頃。
ネオがある店を見て、「可愛い!」と声を上げた。