月夜の翡翠と貴方【番外集】
小さく足音を鳴らして、その店へ駆け寄る。
店では、優しげな少女が微笑んでいた。
「綺麗で、素敵だわ」
売られているのは、金属のアクセサリー。
ネオがそれを嬉しそうに眺めるのを見て、タツビが馬鹿にするように笑う。
「ばーか、お前にはまだ似合わねーよ」
てっきり言い返すのかと思ったが、ネオはフンとそっぽを向くだけだった。
「勝手に言ってなさいよ」
ネオのその返事にムッとしたのか、タツビは「なに大人ぶってんだよ」と言う。
それでもネオは、そっぽを向いたまま。
やがてまた口喧嘩に発展するだろうと思ったのか、ルトは既に子供達を気にもしていない様子だ。
並べるようにしてぶら下げられたネックレスと、その下に置かれた髪飾りを眺めている。
私は落ち着いてアクセサリーを見る気にもなれず、喧嘩になりそうなふたりをいさめていた。
「ジェイド」
名前を呼ばれて、振り向く。
そっと、頭に何かが添えられた。
「……え?」
ルトが優しく笑いながら、こちらへ手を伸ばしている。
その手に持っていたのを見せられて、私は目を見開いた。
……大きな蝶と華がかたどられた、髪飾り。