月夜の翡翠と貴方【番外集】
「そのまま、じっとして」
そう言われて、びくりと動きを止める。
彼が、こちらへ一歩近づいてくる。
被っていたフードをとられ、彼の手で頭の横に髪飾りがつけられた。
……大きな華に、蝶が止まっている。
その光景をモチーフにした金属の飾りに、長いリボンがふわりと巻きつけられていた。
顔の横で、その薄桃色のリボンが揺れる。
耳に当たって、少しこそばゆい。
穏やかに、愛しいものへ向けるような瞳を細めて、彼は私を見ていた。
その綺麗な色をした深緑と、目が合う。
…心臓が、大きな音を立てた。
「……似合うね。可愛い」
ルトはそう呟くように言うと、頬を朱色に染めて私達のやりとりを見ていた店の少女へ、向き直った。
私の髪色にも驚いていたのか、ルトがそちらを向いた瞬間、少女はハッとして私から視線をそらす。
ルトが、「これ下さい」と笑いかけた。
少女は代金を受け取ると、ぺこりと頭を下げてきた。
「ネオちゃん、何か欲しいもの…」
子供達のいる方へ、ルトが何気なく声をかける。
しかし、子供達まで頬を染めて、私達を見ていた。
「えっ……なに」
ルトが驚いて、苦笑いをする。
ネオとタツビは顔を見合わせ、そしてニッコリと笑い合った。