月夜の翡翠と貴方【番外集】


「いいえ。なんでもないわ」


ルトが、照れ臭そうな顔をする。

その様子に笑いながら、私は頭につけられた蝶に触れた。

……またひとつ、宝物が増えていく。

私は胸が強く締め付けられるのを感じながら、「ルト」と呼んだ。


「…ありがとう」


彼は、優しく笑い返してくれた。





その後、ネオが疲れたと言うので近くで休むことにした。

立ち並ぶ民家の外壁のそばで、立ち止まる。

ネオは大きく息をついて、その場に座り込んだ。


「はぁっ、疲れた!」


それに比べ、疲れた様子のないタツビはネオは見て、呆れた顔をする。


「いっつも馬車ばっかり使ってるからだ」


タツビは家の手伝いで鍛えられているのか、たくましい。

ネオは悔しそうに、頬を膨らませた。

「わかってるわよ、そんなの。わたしだって、好きで馬車ばかり使ってるんじゃないわ」

……それは確かに、そうかもしれない。

貴族は敵が多いぶん、特に子供などは一人で歩かせようとはしない。

それこそ、私達のような人間を雇うことが必要になる。


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