月夜の翡翠と貴方【番外集】
…私のことは、いくらでも馬鹿にすればいい。
しかし、ルトを侮辱するのは許さない。
絶対に、許さない。
「…本当に、苛々するね」
その低い声とともに、レンウは再び笑うのをやめた。
彼の青の目は、笑っていない。睨んでもいない。
けれど、確かに色濃くなっていた。
こちらに対する、嫌悪の、まなざし。
「…お姫様が、隣にいられるような相手じゃないんだよ」
睨む私を一瞥すると、レンウは横を通り抜けて行く。
「………誰が」
お姫様、だ。
聞こえていたかもわからない呟きには、なんの言葉も返ってこない。