月夜の翡翠と貴方【番外集】
ルト、と呼ぼうとしたが、私の目に映ったのは、何人もの男達に囲まれた彼の姿だった。
…数が、多すぎる。
まるで合図でもしたかのように、男達は一斉に剣を振り下ろす。
ルトはその場で飛躍して剣をかわすと、近くの民家の屋根へと飛び乗った。
…これでは手出しが、できない。
屋根の上に立った、ルトと目が合う。
彼はひとつ息を吸いこみ、吐き出すと、私に向かって口を開いた。
「……ジェ…」
…彼が私の名前を、呼び終わる前に。
私とネオ、タツビの周りを、まるで山賊のような姿をした男達が一斉に取り囲んだ。
ビクリと肩が跳ねる。
タツビがよろよろと、私にしがみついてきた。
男達は私達を見て、ニヤニヤと笑う。
……誰、だ。
昨日の男が、雇ったのか。
タツビの肩を抱きしめ、男達を睨む。
すると、私の背中におぶさって寝ていたネオが、目を覚ました。
「……ジェイド…さん…?」
ネオの瞳が、目の前のただならぬ光景を映す。
私の目の前にいる小太りの男と目があったのか、ハッと目を見開いた。