月夜の翡翠と貴方【番外集】
「だ、誰……?」
ネオの震えた声が響いたとき、その小太りの男がニヤリと笑った。
「……お目覚めかい?プリジア家のお嬢様」
……え?
ネオが、目を見開く。
背筋が、凍った。
「…なんで、わたしのこと」
その身体が小刻みに震え始めたのが、背中から伝わってくる。
男は一歩、こちらへ近づいてきた。
「……わりぃなぁ、こんな手荒なこと、俺らもしたくないんだがなぁ。こちとら、生活がかかってんだよ」
男が近づいてくる度に、後ずさる。
……ルトじゃ、ない。
この男は、ネオを狙っているのだ。
「お前さんは、何も悪くない。わりぃのは、お前さんの父親だ。な?頼むよ、大人しくこっちへ来てくれよ」
男のいやらしい笑みとその言葉に、ネオは絶叫した。
…何故、どうして。
頭が混乱して、追いつかない。
昨日のあの男は、ルトを狙っていたんじゃなかったのか?
何故ネオを狙う輩まで、出てくるんだ。
プリジア家を狙う輩がいるなんて、依頼内容にはなかった。
頃合いを見計らっていたのか。
まさか、こんなことになるなんて。