月夜の翡翠と貴方【番外集】
「ー…いいのか?ルト・サナウェル。貴様の大切な相棒を、助けなくて」
コツ、と。
暗闇から、昨日のあの男が姿を現した。
ルトがその姿を見て、舌打ちをする。
シルクハットをとると、男は唇を噛むルトを見て、ニヤリと笑った。
「…どうだ、悔しいだろう?何もできない不甲斐なさに、絶望するだろう」
まるで、ルトを嘲笑うかのように。
男は顔を歪めるルトを見て、愉快そうに笑った。
「貴様へのこの長年の恨み、どう晴らそうかと考えていたら…女の相棒が出来たというじゃないか。あの冷徹な、ルト・サナウェルに」
……冷徹。
過去の仕事をする彼の姿は、そう見えていたのだ。
「貴様にこの右腕を折られてから、一体どれだけ苦労したと思ってる?雇い主には役立たずだと捨てられ、しばらく路頭に迷ったさ」
もう治っているのか、男が右腕を上げてルトを指差す。
ルトは冷めた瞳をして、屋根の上から男を見下ろしていた。
…ああ、嫌だ、その深緑。
暗くて冷たくて、恐ろしい。
きっとあの瞳には、私さえも映らないのだ。
男は何も言い返さないルトを見て、ますますニヤニヤと笑う。