月夜の翡翠と貴方【番外集】
「ハッ、減らず口の貴様も、好きな女を人質に取られては何も言えないのか!どうだ、今の気分は?大事なものを壊されるかもしれない、恐怖は?」
…うるさい、うるさい。
私は、キッと男を睨んだ。
ネオが耳元で、すすり泣いている。
目の前で荒く息を吐く男が、私の髪に触れた。
「!」
「いい髪を持ってるねえ、お嬢さん。あのルトって男の、相棒だって?お前さんには、貴族のペットの方がお似合いだがねえ」
その下品な物言いに、カッと頭に血が上った。
「黙れ!」
私の出した大声に、ネオとタツビがビクリと肩を震わせる。
…先程から、何を言っているんだ、この男達は。
鋭く睨む私に、さらに男は笑うと、汚い手で身体に触れてきた。
ぞわ、と鳥肌がたつ。
「ジェイド!」
ルトの声が、辛うじて私に平常心を保たせる。
「…触らないで…っ」
ネオをおぶっていることで、手を動かせない。
「ジェイドさんっ、おろして」
見兼ねたネオが震えた声で言うが、この状況でそんなこと、できるはずがないのだ。
「くそっ、ジェイドは関係ないだろ!?狙うのは俺だけにしろよ!」
たまらず叫んだルトの言葉に、唇を噛む。
…関係なく、ない。