月夜の翡翠と貴方【番外集】
苛立ったルトに、シルクハットの男が勝ち誇った顔で笑った。
「復讐は、こうやって晴らさないと意味がないだろう!?」
……ルト、ルト、ルト。
じわ、と涙がにじむ。
悔しい、悔しい。
もっと私に、力があれば。
もっと、戦えたら。
せめて、ネオとタツビだけでも逃がすことができたら、よかったのに。
「っ、ジェイド!」
見上げると、ルトが屋根の上から下りようとしていた。
けれど、下では剣を構えた男達が待ち構えていて、できない。
「…ルト…!」
彼の名前を呼んだ瞬間、私とタツビの周りにいた男達が、ネオを捕まえようと襲いかかってきた。
「っあ、ネオ!」
「いやあああ!やだ、やだ!タツビ、ジェイドさん!」
逃げる間もなく取り囲まれ、ネオが捕まってしまう。
ネオだけ連れていかれたら、もうどうすることもできない。
しかし、やはり私の髪は不運か幸運か、男の目に止まったようで。
「…女とそこのガキは、貴族どもに売っちまおう」
タツビの目に、恐怖が浮かぶ。
私は男を睨みながら、タツビの手を握りしめた。
男達に手首を縛られ、連れていかれる。
ルトの方を見上げると、苦し気な瞳と目があった。