月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…ごめんね。ちゃんと、守れなくて」
仕事を失敗したと、言ってもいい。
ふたりを無事に送り届けることが依頼内容だったのに、それができなかったのだから。
タツビは静かに、「仕方ねーよ」と言った。
「あんなに人数がいたら、どうしようもねえよ」
…もっと、もっと。
私が強ければ、よかったのに。
「おふたりのせいじゃ、ないわ」
ず、と鼻をすすって、ネオはそう言ってくれるけれど。
私は態勢を変え、その場に座った。
「…優しいね」
でも、これは私達の責任だ。
ルトを狙う男と、ネオを狙う男が一緒になって襲ってきた。
きっと利害が一致して、手を組んだのだろう。
ルトは今、どうしているだろうか。
戦って、いるのだろうか。
ここに来るまでの道のりは大体記憶したから、ここさえ出ればパラべの次の街まで走っていけるかもしれない。
ここから出さえすれば。
依頼の遂行は、全うできる…けれど。