月夜の翡翠と貴方【番外集】
手首と同様に、縛られた足首。
正座の態勢になって、私は身体を仰け反った。
そして、後ろに縛られた手を使って、靴を脱ぐ。
「……っ、」
浅い息を吐いて、首を後ろへ向けた。
…左足の靴を、脱ぐことができた。
カラン、という音と共に、鞘に収められた小型のナイフが、靴から出てくる。
それに気づいたタツビが、目を見開いた。
「……タツビ、くん。これ、私の手の上に置いてくれない?」
そう言うと、タツビは身体を引きずるように動かして、床に落ちたナイフを口でくわえた。
そして、私の手の上に置いてくれる。
「…ありがとう」
私は微笑むと、手を動かして鞘からナイフを抜いた。
カラ、と鞘が床に落ちる。
ナイフを逆さに持って、手首を縛る縄に当てて、こする。
少しずつだが、縄が切れていくのが感触でわかった。
「……すげえ……」
私の手元を見て、感心したようにタツビが声を漏らす。
しばらくの間ナイフを動かしていると、やがてギ、という音と共に手首の縄がほどけた。