月夜の翡翠と貴方【番外集】
笑っているのに、恐ろしいものを抱えた、貼り付けた笑顔を浮かべてこちらを見つめるルト。
…怒っている。
出会ってから、たった一ヶ月と少ししか経っていないけれど。
幾度となく見てきて、きちんとわかっているのだ。
彼の笑顔の、裏と表は。
「…どこいってたの?」
いつもより低い声に、思わず肩が震えそうになる。
なるべく平静な声を努めて、私は言葉を返した。
「…寝れなかったから。宿のなかを、ふらふらしてただけ」
彼の目を見つめて言うと、ルトはやはり薄く笑って「へえ」と返事をする。
「なに話してたの?」
…え?
その言葉に驚いて、目を見開く。
ルトの表情は、先程と全く変わっていなかった。