月夜の翡翠と貴方【番外集】


生きていなくては、いけない。

彼がまだ生きることを諦めていないなら、私だって諦めない。

もがいてもがいて、醜くなっても、それでも。

なにがなんでも、生きたいと思える。

じわ、と瞳に涙が浮かぶ。


……貴方の、せいでしょう?


「…そろそろ観念しな、嬢ちゃん」

その言葉と共に、勢い良く剣が振り下ろされた。

咄嗟によけた弾みでバランスを崩し、倒れこむ。

「……っく、あっ」

痛みでたまらず、声を上げた。

痛い、痛い……!

血がこんなにも、流れている。

以前、私をかばって腕に矢をかすめた、ルトを思い出した。

…こんなにも、痛い。

それなのに、あんなに無理をして笑っていた。

ルトは、馬鹿だよ。

私なんかのために、傷つかないで。

笑っていて、ほしい。

涙がにじんで、視界を濁す。


立ち上がれなくなった私を見て、男が周りを見渡した。


「……ネオ・プリジアは?」


…その言葉に、ハッとした。

何を、痛みで泣いているんだろう。

私の後ろで、小さな子供がふたり、息をひそめて怯えている。

私が任された、命。

絶対にここから連れ出すと、約束したのに。

立ち上がれないなんて、言い訳だ。

私が守ると、誓ったのだ。


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