月夜の翡翠と貴方【番外集】
ルト、ルト。
私はいつだって、命がけだ。
貴方の隣にいるために、命がけだ。
どれだけその笑顔に、救われたかわからない。
私が死んだら、悲しんでくれるのでしょう。
きっと、泣いてくれるのでしょう。
それから私を忘れても、もう、いい。
…もう、いいの。
ーーガキン!
気づけば私は、その手にナイフを持っていた。
血に濡れた左手も使って、両手で。
細いナイフで、男の剣と立ち向かおうとしていた。
痛みで頭が働かなくたって、それでも。
私の行動に、男が目を見開く。
男を睨み、唇を噛んだ。
瞳から、絶え間無く涙がこぼれる。
…死んでも、いい。
それでも、生きることは諦めたくなかった。
…ルト、ルト。
どうかいつまでも、笑っていて。
「………ジェイド!」
声が、響いた。
後ろの窓から、彼の声が。
男が目を見開いて、窓の方を見ている。
私は振り返って、窓の淵に立つその姿を見つめた。