月夜の翡翠と貴方【番外集】
優しさなんてこれっぽっちもない深緑で、彼は私を見ている。
血に染まった服を見て、目を見開いた。
そして何も言わずに、飛躍する。
「……っ!?」
驚く男の首を思い切り蹴って、彼は私の前に降り立った。
目を見開く私に振り返ることなく、彼は私の名前を呼ぶ。
「…だから、無理するなって言ったのに」
ため息をつくと、彼は鋭い瞳で私を見た。
思わず肩が震える。
そして、今まででいちばん低く強い声で、彼は言った。
「…ジェイド。お前、俺を残して勝手に死んだら、許さねえよ」
……ほら、私と同じ瞳。
もう戻れない、私はルトがいないと生きていけない。
……ルトも、そう、なの?
瞳に涙を浮かべ、私は彼を見上げる。
…こんなにも生きたいと、強く胸を打つ。
貴方のせいよ、愛しい人。
「……生きる。ルトのために、生きる。ルトが生きてる限り、ずっと、隣で」
震えた声で、訴えるように言った私を、ルトは苦しそうに目を細めて見た。