月夜の翡翠と貴方【番外集】
…これは、だいぶ。
じわりと滲んだ冷や汗を感じながら、私は上を見上げた。
「…通れないんだけど」
「通れないようにしてるんだよ」
今度は、笑っていなかった。
確かに、怒っている。
けれど、その深緑の奥に少しだけ切なそうな色が見えて、私は苦しくなった。
「…そんなに、俺に話せない内容?なんで隠すんだよ」
…やっぱり。
ルトに、容易に隠し事はできないな、などと思いながら、口を開く。
「…なに言ってるの。隠してなんかないよ。遅いし、寝よう」
「ジェイド!」
…言えるわけ、ないじゃないか。
ただでさえ、先程のレンウとの会話で疲れているというのに。
ルトまで、そんな強い目で責めないで欲しい。