月夜の翡翠と貴方【番外集】
怒り狂った男が、私へ殴りかかってきた。
しかし私はそれを、すんなりとかわす。
その数秒後にはルトの蹴りがお見舞いされ、男は気絶して倒れた。
その後ふたりで、木箱を開けた。
泣くネオを抱きしめるタツビが見えた瞬間、緊張の糸が切れたのか、私はそのまま崩れ落ちるように倒れていった。
*
ネオとタツビを無事送り届け、出血多量で貧血を起こした私は、すぐさま治療を受けた。
剣をかすめた程度であったため、幸い傷は浅く、大事には至らなかった。
ルトはそれを知って、大きく息をつく。
私はそれを、今までとは違う感情で見つめていた。
その日の、夜。
森のなかでも一際高い木の枝の上に、彼に抱きかかえられたまま座っていた。
月が、私達を照らしている。
肩より少し上の長さになった髪に、光が灯った。
「…私ね、ルトが笑ってるのが、大好きなの」
そういうと、彼は優しく目を細めて、「うん」と言った。