月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…だから、いつまでも笑っててほしい」
ルトは、涙の浮かんだ私の目尻を拭うと、苦し気に微笑んだ。
「…うん。でももう俺、お前がいなきゃ笑えないよ」
涙が伝う頬を、彼の指がなぞる。
触れた温もりが心地良い。
包帯の巻かれた私の右の腹を見て、彼はギュッと目を閉じた。
「……お前が死んだら、俺、笑えないよ……」
…彼の笑顔を永遠にするのは、私の死ではなかった。
私が生きることで、ルトが笑うなら。
「……私、この髪に生まれてよかった」
そう微笑むと、ルトは一層眉を下げ、そして私の髪に触れ、涙をこぼした。
彼の涙と私の涙が、混じり合う。
……ねえ、泣かないで。
いつまでも、どうか笑っていて。
「大好き」
月明かりが、彼の顔を照らす。
茶髪が透き通って、綺麗だと思った。
彼の頬に手を添え、引き寄せ、キスをする。
嬉しそうに笑う彼の顔が、視界に広がった。
つられて、私も眉を下げて笑う。