月夜の翡翠と貴方【番外集】


そして、顔を歪めさせた。


「…ジェイドは、俺のものだよ」


そう言って、私の首元に顔をうずめる。

見えた彼の顔は、苦しそうで、けれどとても美しかった。

私が、駄目にしてしまう。

自由で美しい彼を、縛ってしまう。


首の下辺りで、少し痛みが走る。

顔を上げた彼は、やはり辛そうに微笑んだ。


「…離さないよ」


私の首の下につけられたのは、キスマーク。

…こんなものつけたら、本当に離れられなくなる。

わかって、いるでしょう。


「…顔色が良くない。寝ろ」


そう言って、彼はベッドとは逆の方を向く。

部屋の扉の前へ立った。


「…どこ、行くの…?」

「……朝には戻るよ。今日はひとりで寝た方が良い」


その言葉を最後に、ルトの背中は扉の向こうに消えた。


< 50 / 455 >

この作品をシェア

pagetop