月夜の翡翠と貴方【番外集】
レンウは私の言葉に、「そうだねえ」と意味深に笑った。
「さて、どうしようかな。船に乗ろうかな」
もともとその予定だったし、と言うレンウに、私は内心安心した。
これ以上なにか言われては、たまったものではない。
「…そうですか。お気をつけて」
精一杯に皮肉を込めてそう言うと、レンウはにっこりと笑う。
「楽しい船旅に、なるといいけどね」
…ルトはやはり、なにも言わなかった。
*
食事が終わり、荷物をとりに部屋へ戻る。
宿の廊下を歩くジェイドの隣に、主人である青年の姿はない。
……さて、どうやって仲直りをしようか。
食事が終わってから、私はそのことしか考えていない。
これまでに、ルトとケンカに似たものをすることは、何度かあったけれど。
大体は自然と元に戻るか、ケンカの原因自体がくだらないことだったりしたから。
…ああ、どうしたものか。
きっと私が謝っても、ルトは納得しないだろう。
私の不安や心配に、彼は怒っているのだから。