月夜の翡翠と貴方【番外集】
昨夜のルトの切なげな目が、私の脳裏に焼き付いている。
…ルトは、優しく愛してくれる。
私の弱さも受け止めて、愛してくれる。
しかしその優しさは、彼自身の足を引っ張っていて。
自由で、身軽で、猫のようなルト。
彼は、前に『縛られるのは好きじゃない』と言っていた。
私のような女に縛られては、彼は自由に動くことができなくなる。
仕事の邪魔にだって、なってしまうかもしれない。
『愛されていられる自信』がない私は、レンウに責め立てられても、なにも言い返すことはできなかった。
情けない。
情けなくて、悔しい。
しかも、それをルトに伝えてしまうなんて、なんて馬鹿な女なのだろう。
はぁ、とため息をついて、部屋の扉の前に立った。
…ルトは、部屋にくるのだろうか。
荷物は部屋にあるはずだから、きっととりにくるだろうとは思うけれど。
そうして扉を開けようとした、そのとき。
「ジェイド」
…その声に驚いて、とっさに横を見る。
しばらく呼ばれないだろうと思っていたので、私は声の主に目を見開いた。