月夜の翡翠と貴方【番外集】
「……なんでもいいよ。ルトが決めて」
いつも通りの、返事。
しかしルトの反応は、いつもと違うものだった。
厳しい色が濃くなって、切なげな色が混じる。
私の言葉に、ルトの深緑は強くこちらを見つめた。
…怒った?
いや、違う。
すごく悲しそうで、切なそうな、あの目は……
ルトが、こちらへ歩いてくる。
私は思わず、後ずさった。
けれど、やはり彼は許してくれない。
私を強い深緑で見つめて、離してくれない。
ぱし、と手首を掴まれ、私は逃げ道を失った。
いつも通り、答えたつもりだ。
なんでもいい、ルトがいれば。
他には、なにもいらない。
「………ジェイド」
頭上から、感情を押し殺したような、低い声がする。