月夜の翡翠と貴方【番外集】
…頬が、熱い。
「…わかんないよ…」
ルトの言葉の意味が、わからない。
…ほら、また。
私を支配して、離してはくれない。
彼の一言が、私を悩ませるのだ。
『どうでもいい』と思い、過ごしてきた私に。
ひどく面倒で、それでも愛しいくらいの想いを、抱えさせる。
なんて、馬鹿なのだろうか。
彼の隣にいるべきではないのだ、と心の奥底で叫んでいても。
見つめられただけで、たくさんの感情が溢れ出してしまう。
嫌になるくらいに、囚われている。
…彼の深緑を、私は狂うほど愛していた。
*
レンウと宿を出て、港へと歩く。
途中、ルトが鍛冶屋に行きたいというので、近くの鍛冶屋に寄った。
「なんだい、剣でも買うのかい?」
相変わらずにこにこしているレンウは、店内に並ぶ剣や金属器を眺めながら、ルトに声をかけた。