月夜の翡翠と貴方【番外集】
ルトは私のそばへ歩み寄ると、懐から布地を取り出して、喉元に当てる。
私が小さく礼を言うと、ルトは強い声で「あのさ」と言った。
「…俺にとってジェイドは、奴隷じゃないよ」
レンウが訝しげに、ルトを見つめる。
ルトは、私をまっすぐに見た。
「…俺の、相棒になるんだよ」
…相棒…?
目を見開いた私に、ルトは「なるかどうかは、ジェイドが決めていいんだけど」と言った。
「…俺は、仕事のパートナーになってほしい。こんな血の気が多い仕事、嫌かもしれないけど。ジェイドが決めて」
…私が。
ルトの、仕事のパートナー…
「…ルト。君、本気で言っているのかい」
呆気に取られたレンウが、信じられないという顔をして、ルトを見る。
「当たり前だろ。動きだって悪くないし、ナイフも扱える。鍛えれば、すぐに戦えるようになるよ」
…ルトは、そこまで考えていたのか。
私は、ルトの隣にいることだけで、精一杯だったというのに。
ルトは、私とのこれからを、考えてくれていたのだ。