月夜の翡翠と貴方【番外集】


「…いいの?本当に」


視界が、滲む。

それを見て、ルトは「すぐ泣く癖直さないとなあ」と笑った。


「ジェイドがいいなら。俺は凄く嬉しいんだけど」


…役立たず、かもしれない。

けれど。


ルトは、私に道をくれた。


『奴隷』以外で、生きていく道を。

ルトの隣にいられる、術を。


「はいはい泣かない。俺も迷ってて、なかなか言えなかったんだけど。不安にさせてたんなら、ごめん」

ジェイドは、首を横に振る。

涙が、ぽろぽろと零れる。

ルトはレンウのほうを見ると、「これでいいか?」と言った。


「え?」

「もう、ジェイドを俺から連れ去る理由がなくなっただろ。ジェイドは、俺のパートナー」

だからもうなにもするなよ、と言うルトに、レンウはハハ、と笑った。

「心配しなくても。僕は、船に乗って他国へ行くよ」

…では、私は他国へ連れて行かされそうになったのか。

改めて恐ろしくなった。


「ああ、そろそろ船がくる時間だ。君のパートナー、傷つけて悪かったね」

時計を見て、レンウが笑う。


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