月夜の翡翠と貴方【番外集】

先程あんなに怯えていたというのに、すっかり調子が戻っている。

なんて男だと思いながら、ジェイドは皮肉を込めて「さようなら」と言った。

レンウは、やはり笑う。


「…思ったより、面白い女だったよ。縄はしっかり縛らないといけないね」


その笑みに、敵意は少しも感じられなかった。







ルトとふたりで、路地を出る。


手を繋いで、そのまま宿へ向かった。

もう、昼過ぎだ。

「腹減ったなぁ。それ、どうにかしたら、飯食いに行くか」

それ、というのは、喉元の傷。

少しずつだが、絶えず流れてくる血を布で受け止めながら、ジェイドは小さく「うん」と返事をした。





宿の支配人に見せると、心底怯えたような顔をされた。


「あらあら!昨夜お泊まりになった方ですよね?どうされたんですか!」

気の良さそうな小太りの女は、私をカウンターの奥へと連れて行くと、包帯を用意してくれた。


「…あ…ありがとうございます」

「いえいえ!大事なお客様ですから」


にこにこと笑って、治療をしてくれた。

喉元で目立つからと、薄く包帯を巻いてくれた。



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