月夜の翡翠と貴方【番外集】
「なにか、首を覆うものがあるといいですね。しばらくしたら包帯をとって頂いて、チョーカーなどで傷口を隠してはいかがでしょう」
支配人の提案に、ルトは「明日買いに行こうか」と言ってくれた。
再度支配人に礼をいい、宿を出る。
ルトは嬉しそうに、私の手を握って、歩き出した。
パン屋で適当にパンを買い、広場で食べる。
広場では、子供達が元気よく駆け回っていた。
「…レンウに、なに言われたの?」
隣を見ると、パンを片手にこちらを見つめるルトがいる。
私はパンを見つめながら、「いろいろ」と返した。
「…いいじゃん。教えてくれても」
「凄くくだらないことだから。それに、私はなにも言い返せなかった」
つまらない意地だと、思う。
けれど、あのときレンウになにも言えなかったことは、私にとっては悔しくて悔しくてたまらない。
ルトはしばらく私を見たあと、「なに言われたか知らないけど」と言って、前を向いた。
「…他人がなんて言おうと、俺はジェイドが欲しくて、カナイリーからとってきたんだよ。俺の意思だから、勘違いするなよ」
子供達が、楽しそうに遊んでいる。
私はそれを眺めながら「うん」と返事をした。