月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…私ね、不安だったの。なにもできないし、ルトにたくさんのことしてもらったのに、なにも返せてないから」
「…そんなこと、ないよ」
私は、首を横に振る。
「…怖かった。このままルトの隣にいてもいいのか、不安だった」
ルトは優しいから。
今だって、悲しそうに眉を下げてくれる。
…愛しい愛しい、ご主人様。
そして、私のパートナー。
「…これからは、ふたりで決めよう」
ルトが、私の頭を撫でる。
私がなにを、という問いを目で伝えると、ルトは「いろんなこと」と笑った。
「今日なにするか、これからどうするか。ふたりのことだから、ふたりで決めよう」
…あのときの、ルトの言葉が蘇る。
『主人と奴隷じゃないよ』と言った、ルト。
その、意味は。
…ふたりで。
私は嬉しいという思いを隠さずに、笑った。
「うん」
口角が上がるのが、抑えられない。
少し恥ずかしくなってくると、ルトの手が頬に添えられた。
「なに………」
え、と思ったときには、上を向かされ、唇を塞がれていて。
…こ、こんなところで。
長いキスが、私をいろんな方向へ焦らせる。