月夜の翡翠と貴方【番外集】
…人が。子供達が。
…長い。苦しい。
やっと唇が離されると、楽しそうなルトの笑顔が目に映った。
「可愛い。ほんと可愛い」
…ルトくらいだ。
『美しい』だとかはともかく、何度も『可愛い』と言ってくる男なんて、ルトくらいだ。
子供達のほうをみると、こちらのことなど一切気にもとめていないのか、変わらず遊んでいる。
ルトはパンを食べ終わり、子供達を見ていた。
それを見て、ジェイドは唇を噛む。
…少しだけ、我儘を言っては駄目だろうか。
はしたないと、思われるかもしれない。
大体、最初にストップをかけたのは私だというのに。
けれど、心の奥底で溜まったものは、私を女として動かすには充分だった。
「………ルト」
呼ぶと、明るい顔でこちらを向く。
ジェイドはルトを見つめると、口を開いた。
「…も、物足りない」
…自分でも、言葉を選ぶべきだったかなと、後悔した。
案の定意味がわかっていないのか、ルトは「まだ食べる?買いに行く?」なんて言っている。