月夜の翡翠と貴方【番外集】
「……ちがう」
私が少し拗ねたような顔をすると、ルトは不思議そうな顔をした。
…キス、だけ。
いつも、そうじゃないか。
そんなに、いらない?
そんなに、欲しくない?
彼のために唯一できること、なんて考えて、結局は私が欲しいだけなのだ。
いらない、と言われたら、それでいい。
ただ、少しの期待にかけて。
できるかは、知らないが。
…可愛らしく、ねだってみようか。
「…キス、だけ?」
上目でそう訊くと、ルトは目を見開いた。
甘えるような目で見つめると、ルトは目を泳がせ始める。
…頬が、少し赤い。
それを見て、わずかに口角が上がりそうになるのを堪えて、見つめ続けた。
「…えっと、それは、どういう意味で言ってんのかな?」
「…わかってるでしょ」
「…………」
…もう、そんな気はなくなったのだろうか。