月夜の翡翠と貴方【番外集】
しないならしないで、私は構わない。
けれど、彼に我慢させているなら、と思ったのだが…
ルトは私を静かに見つめると、「…いいの?」とつぶやいた。
「…いいの、って?」
「前に駄目って言われたから。しばらく無理かなって思ってたんだけど」
気づけば、惚けた目に見つめられていた。
色味を帯びた深緑は綺麗で、見惚れてしまう。
「……いつまでたっても、してくれないから。もう、そんな気なくなったのかと思った」
目をそらして言うと、ルトは嬉しそうに笑った。
「可愛いね。なに、ずっと待ってたの?」
「…………」
「早く言ってくれればよかったのに」
そう言って、私を見つめる。
その目は、妖艶な色を残して。
「…今日の夜、ね」
彼が、耳元で囁く。
…私の、全てを。
貴方のものにして。
*
「…照れてる?」
夜、宿の部屋。
私とルトは、ベッドの上にいた。
私の上にルトが覆いかぶさって、余裕そうな笑みを浮かべている。
「…別に。照れてない」
今更恥ずかしくなって、ふい、と顔を背ける。
しかし視界の端に映るルトは、笑っていた。
…だから、その笑うタイミングがよくわからないのだが。
まだ服すら脱いでいないというのに、顔が熱くなってくる。