月夜の翡翠と貴方【番外集】
*翡翠葛は甘く咲く
「一緒に寝たい」
そう、彼女が恥ずかしそうに言ってきたのは、港町を出て一週間後のことだった。
「………えっ?」
比較的栄えている街の、明るい夜。
大きな宿の一部屋で、ジェイドは枕を握りしめて、こちらを見ていた。
「…一緒に…て…いつも、一緒に寝てるじゃん」
彼女にしては珍しい、その甘えるような目に一瞬心臓が鳴ったのは、見ないふりをしておく。
ベッドに腰掛ける俺に、ジェイドは強く枕を握りしめて「ちがう」と首を横に振った。
一緒に、って、いつも同じベッドに寝ているのに。
ジェイドは目を伏せ、ますます頬を赤く染めて。
「…抱きしめて、寝て、ほしい」
…思わず、なにも言えなくなる。
目を見開いて固まる俺に、ジェイドは少し拗ねたような顔をした。